Chladni Figureクラードニ図形

音響の父、クラードニの音響図形

物体を振動させると音が出ますが、逆に音は物体を振動させることもできます。薄い金属板やガラス板などに細かい砂をまいて、板の辺をバイオリンなどの弓で振動させると幾何学的な模様が観察されます。これは板全体が上下振動するのではなく波を打つように振動し、大きく振動する部分にまいてあった砂がはじき飛ばされて、ほとんど振動していない部分周辺に砂が集まってくるからです。

その結果、幾何学模様が現れます。この大きく振動する部分を「腹」といい、ほとんど振動しない部分を「節」といいます。この腹と節の部分は音の周波数や板の大きさ、硬さなどに応じて現れる場所が異なります。波長が短く高音であればあるほど幾何学模様は細かなものになっていきます。周波数を変えると模様が変化するのはこうした理由によるものです。

この原理が初めて見出されたのは1680年のこと。“イングランドのレオナルド“とも呼ばれた自然哲学者ロバート・フックが、ガラス板に小麦粉をまぶし、その縁に沿って弓を滑らせて振動させて振動パターンを観察しました。

それから約100年後の18世紀後半、この現象によって現れる様々な幾何学模様を音響図形としてまとめたのがドイツの物理学者であり、音楽家でもあるエルンスト・クラードニです。

彼も同様の観察を行い、音響図形を体系化し、音波の圧力が物理上の音質に影響を与えることを証明したのです。言い換えれば「音を可視化する」方法を開発したのです。その功績から彼は「音響の父」と呼ばれ、また、彼がまとめた図形は「クラードニ図形」と呼ばれています。

このクラード二図形は、現代でもギターやバイオリンの胴板の振動を調べるときなどにも使われています。

クラードニ図形は「神が音に托した指紋」とも呼ばれる不思議な幾何学模様。映画「ダ・ヴィンチ・コード」で有名になったロスリン礼拝堂の壁の立方体にもこの図形に似た模様が刻まれています。宗教音楽によって作られる13パターンの音響図形が壁の装飾に使われているのです。礼拝堂が建築されたのは15世紀。その時代にすでに音の原理を理解していた人がいたということになります。

目には見えない「音」が複雑な図形を描き出し、音の変化に応じて形を変えていく ─ そんな不思議な動画がソニーのウォークマンの公式YouTubeで公開されたこともあります。覚えていらっしゃる方がいるかもしれません。

ギターの背面に現れたクラードニ図形

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